国際ロボット展 iREX2025 視察レポート
SCM・物流に特化したコンサルティングを提供しているBLUEDGE(ブルーエッジ)では、最新のテクノロジーやソリューションに関する知見を得るため、様々な展示会への視察を実施しています。
今回は、2025年12月3日から4日間開催された「国際ロボット展 iREX2025」を視察してきました。ロボット展では、ロボットを構成する部品から特定の業界に特化したソリューションまで幅広い製品やサービスが出展されています。
本記事では、ロボット全般に関するトレンドと、物流業界向けの製品やサービスをご紹介したいと思います。
ロボット全般のトレンド
今回の国際ロボット展 iREX2025では、既存の産業用/協働ロボットとAIの統合や、双腕ロボット/ヒューマノイド(人型ロボット)の展示が多く見られました。また、製品・サービスの展示からはハードウェアやソフトウェアなどの「モノ」から、それらを統合したシステムやソリューションなどの「コト」への変化を感じました。
AI活用領域が広がる
これまでも画像認識などの分野でAIやML(機械学習)が活用される例は多くありました。それでも、システムのごくわずかな機能を占めるに過ぎませんでした。
今回の国際ロボット展 iREX2025では、画像認識にとどまらず、作業内容の理解、ロボットアームの軌道生成、物体の把持方法、AGV/AMRなどの移動経路など様々な領域でAIの活用を試みる展示が多かったように思います。
AGILE ROBOTS: Gemini Roboticsで動く双腕ロボットFR3 Duo

Googleが開発した生成AIであるGeminiシリーズのロボット向けモデルであるGemini Roboticsで双腕ロボットFR3 Duoを動かしていました。Tシャツの形を認識して、ハンドで掴んで畳むデモを実施しています。
このデモでは、Tシャツの認識、掴む/話す場所、アームの軌道生成にAIが用いられていたようです。現段階では実用レベルではないものの、進化の可能性を感じる興味深い展示でした。
双腕ロボット/ヒューマノイドの登場
ニュースでもよく目にするようになったヒューマノイドですが、今回の国際ロボット展 iREX2025でもその存在感を感じることができました。特に中国系企業が開発したヒューマノイドを、日本の商社が紹介しているブースが複数ありました。
岡谷鋼機: AgiBot社の台車移動型ヒューマノイド(セミヒューマノイド)

Standard Robots: 台車移動型ヒューマノイド(セミヒューマノイド)

TechShare: AgileX社の人型アーム

二足歩行型であるフルヒューマノイドだけでなく、台車移動型のセミヒューマノイド、固定型の双腕ロボットも多く出展されていましたが、移動の有無・手段に関わらず、当面はAIによる双腕とハンドの制御が主な課題になるのではないかと考えています。
双腕+ハンドの制御、特に物体を扱うタスクでは、現時点では(a) 事前にプログラムした動作を繰り返す、(b) (a)に加えて画像認識などの一部にAI/機械学習を用いる、(c) 人間の操作でリアルタイムにアームを制御するというのが主流でしょう。
ChatGPTなど大規模言語モデル(LLM)がインターネットの膨大なデータから学習したように、ロボットを制御するAIにも膨大なデータが必要となります。そのために必要なデータの生成・収集競争もすでに始まっています。
「モノ」から「コト」への転換
部品単品から特定機能を提供するコンポーネントへの転換や、ロボット単体からロボットと周辺機器を組み合わせて特定業務の自動化システムの提供など、提供価値のレイヤーを拡大させることで、単なる「部品や装置の販売」から「顧客の課題解決」をうたうトータルソリューションへの転換を感じる展示もありました。
背景には、ハードウェアやソフトウェア単体での差別化が難しくなってきており、特定の機能や業界・業務に特化することに自社の優位性を構築しようとしている企業の思惑があるように感じます。
写真はありませんが、NSKの展示は新産業であるロボット関連市場において、物を運ぶ足にあたる搬送用ロボットコンポーネントと、今後伸びていくであろうヒューマノイドのアーム、ハンド用の関節に焦点を当てた展示でした。NSKは、ロボットやフィジカルAIも開発するアールティ社にも出資しており、ロボット関連市場において部品メーカーではとどまらないプレゼンスを発揮しようとしています。
物流分野関連の展示
物流分野に特化した展示についても触れておきたいと思います。
ピースピッキング
ECの在庫型DC/フルフィルメントセンターでは、数万種類の商品を扱うことは珍しくありません。サイズも形状も多様であり、これらを注文に合わせて取り出すピースピッキング作業は多くの労力・コストがかけられています。
このピースピッキング業務に対するロボットの適用には、AGV/AMRやコンベヤを使った搬送の自動化のほかにも、商品を持ち上げて別の箱に入れる作業「ピック&プレース」の自動化があります。
時には数万から数十万種類にもなる商品(SKU)がさまざまな状態で置かれているという複雑な環境に、ロボットを適用させるという非常に高いハードルがあります。
川崎重工: GTP型ピースピッキングAIのための学習データ収集のデモ

このデモでは、データ収集用グリッパーでヒトが商品を掴んで、別の箱に移す作業を繰り返します。その作業をカメラで撮影し、商品とデータ収集用グリッパーの位置や姿勢をデータに変換して蓄積します。蓄積されたデータでAIを訓練し、実際のピースピッキングロボットに適用します。
もちろん数万種類の商品(SKU)を全てわけにはいきませんので、何らかの条件で訓練する商品を厳選してデータを収集することになるでしょう。些細なことですが、どのような商品を対象とするのか、など独自の知見が求められます。
自動倉庫
倉庫においては、限られたスペースにより多くの在庫を保管することも求められます。平置きでは空間の無駄が多く、空間を活用しようと積み上げておくと、今度は取り出しに時間がかかるようになってしまいます。
そこで活躍するのが、自動倉庫システム(ASRS: Automated Storage and Retrieval Systems)です。高密度保管を維持しながら、在庫の取り出しを自動化します。
三機工業: 棚レス自動倉庫

一般的な自動倉庫は、保管棚に商品を格納し、その保管棚からの取り出しを自動化する方式が多いのですが、棚レス自動倉庫は専用の保管ケースとそれを出し入れするAGV/AMRで構成されます。
専用ケースは床に直接積み上げられる構造となっており、保管棚が不要、つまり「棚レス」を実現しています。保管棚が必要な従来の自動倉庫に比べて導入とレイアウト変更が柔軟に行える点がメリットです。
今回は、参考出展とのことでしたので、今後の正式発表を待ちたいと思います。
AMR/AGV
工場や倉庫内での搬送は、ヒトが行うには労力の割に付加価値が低いとされ、自動化の最初に検討される領域のように感じています。
スループットが求められる現場では固定化された設備としてのコンベヤ、コンベヤほどのスループットは求めない現場にはAGV、柔軟な導入と変更に対応可能なAMRがあります。多くの場合AMRが第1に候補に上がるのではないでしょうか。
Preferred Robotics: kachaka(カチャカ)シリーズ

国際ロボット展 iREX2025では、プリファード・ロボティクスのAMR、カチャカシリーズの産業用モデル「カチャカPro」と重量物搬送モデル「カチャカEvo」が展示されていました。
カチャカEvoと同様のタイミングで発表されたカチャカフリートマネージャーによる、より高度な運用・管理が可能になるとのことでした。カチャカEvoへの対応は聞けませんでしたが、もしカチャカProとカチャカEvoの混成利用ができれば、搬送物に合わせた適材適所が実現できそうです。
インダストリー4.0を提唱したドイツにおいては、AGV/AMRの通信・制御の標準規格であるVDA5050に対応したAGV/AMRおよびフリート管理システムが登場しており、機種だけでなくメーカーが異なるAGV/AMRも統合運用している現場もあります。
今回の国際ロボット展 iREX2025でも出店していたテクトレ社がVDA5050に対応したシステムを提供しているようなので注目しています。
構内物流トータルソリューション
倉庫内の物流、つまり構内物流(イントラ・ロジスティクス)の自動化の分野には、さまざまな製品・サービスがあり、全体を自動化するにはそれぞれの製品・サービスを組み合わせて、全体を組み上げる必要があります。
Mujin: MujinOS

MujinOSは、運用管理・実行制御を行う「Mujin WES」、ロボットアームを制御する「Mujin ロボットコントローラ」、AGV/AMRなどのモバイルロボットによる搬送管理を行う「Mujin フリートマネージャー」、業務およびシステムの各種指標を監視するダッシュボードやリモートメンテナンスを統合したシステムです。
まさに前述した「『モノ』から『コト』への転換」の良い例ではないでしょうか。特定メーカーの特定のロボットという「モノ」を売るのではなく、自動化と物流センター全体を1つのシステムとして管理する「コト」を売っているのです。
その他の面白かった展示
東京都立大学: MiLo(マイロ)

自動倉庫のような在庫補充機構を備えたコンビニエンスストアのチルド什器と、その中に補充する商品を搬送して自動補充する小型自動搬送車の展示がありました。デザイン性が高く、未来感も良かったです。
ローレルバンクマシン: xLobomo

硬貨処理機の大手メーカーであり、アーム型ロボットの新規事業にチャレンジしていることは知っていましたが、今回の国際ロボット展 iREX2025で初めて実物を見ることができました。独自のアーム構造でスカラロボットような動作や垂直多関節ロボットの動作など、従来のアーム型ロボットとは異なる特徴がある点で注目しています。機会があれば、参入の経緯やこのアーム構造になった背景をぜひ聞いてみたいものです。
さいごに
2025年12月3日から4日間開催された「国際ロボット展 iREX2025」を振り返り、物流業界向けの注目トレンドについて解説してきました。
今回ご紹介したように、技術のトレンドや、業界特化型のソリューションなど、新たな可能性に触れられるこうした展示会を継続的にウォッチしていくことは、企業の競争力を維持するうえで極めて重要です。
一方で、あまりに幅広い製品・サービスが一堂に会しているため、SCM・物流の実務を担う皆様にとっては「選択肢が多すぎて、何が自社に最適かわからない」という混乱が生じやすいのも事実ではないでしょうか。
今後、ロボットやAIの進化はさらに加速し、市場には想像を超えるスピードで新製品が投入されていくことでしょう。それは選択肢が広がるメリットであると同時に、膨大な情報量という「ノイズ」の中から正解を見つけ出す難易度が、劇的に高まることも意味します。
これからの時代に求められるのは、単に新しい技術情報を追うことだけではありません。自社が解決すべき真のボトルネックを見極める「課題発見力」、そして流行に惑わされず技術の本質を見抜き、最適なソリューションを選び取る「技術の目利き力」こそが重要になります。
BLUEDGE(ブルーエッジ)では、SCM・物流分野と最新テクノロジーに対する豊富な知見をもとに、技術選定から導入までをご支援しています。「自社の課題に対してどの技術が適切か判断がつかない」「選定の視点に不安がある」といった場合は、ぜひ私たちの知見をご活用ください。
BLUEDGE(ブルーエッジ)について
BLUEDGE(ブルーエッジ)では、「あるべき姿」をともに描くコンサルティングと「あるべき姿」をカタチにするシステム開発を通じて、お客様の戦略策定から実行までを一貫体制でご支援しています。日本ロジスティクスシステム協会(JILS)会員。
著者プロフィール
守谷祥史(Shoji Moriya)
BLUEDGE合同会社 代表社員CEO。15年以上にわたり製造業、小売・流通業、物流業などを中心に幅広い業界に対する事業/IT戦略の立案と業務改善、システム導入など実行に関するコンサルティングに従事。現在は、主にサプライチェーン・物流分野におけるソフトウェア、クラウド、AI、ロボティクスなどテクノロジー活用に関するコンサルティングとシステム開発を専門としている。Google Cloud認定 Professional Cloud Architect(PCA)。
※当社は、本レポートでご紹介している製品・サービスの販売店・代理店ではございません。またこれらの企業・団体から広告費等の報酬も受け取っておりません。