ChatGPTでは物流は変わらない——業務に溶け込む「エージェント型AI」の可能性
SCM・物流に特化したコンサルティングを提供しているBLUEDGE(ブルーエッジ)では、生成AIを活用した物流業務の変革に日々取り組んでいます。
ChatGPTやCopilotなどの生成AI、すでに多くの職場で活用が始まっています。皆さまの現場ではいかがでしょうか。「試してはみたものの、便利さをあまり実感できず最近は使っていない」という方も少なくないかもしれません。その原因は、もしかすると物流現場とチャット型AIの相性にあるのかもしれません。
本稿では、人手不足の物流業界に必要なAIは「聞けば答える」チャット型AIではなく、業務システムに溶け込んで「自ら動く」エージェント型AIであるという視点をお伝えしたいと思います。
忙しすぎてAIに質問する時間がない:物流現場のジレンマ
私自身、アイデアの壁打ちや英語の翻訳、プログラミングなど、日常の様々な場面でチャット型AIを活用しています。触らない日がないほどです。PCに向かう時間が長い職種であれば、チャット型AIは非常に強力なパートナーです。
しかし、物流の現場はどうでしょうか。ただでさえ人手不足の中、倉庫のフロアやドライバーの管理、取引先対応など、PCの前に1日中座っていられる責任者はほとんどいないのが実情です。AIに指示を打ち込む時間があるなら、自分でやってしまうか部下に任せた方が早い。そう感じている方も多いのではないでしょうか。
人手不足で生産性を高めなければならない現場でこそ、AIを活用すべきである。にもかかわらず、チャット型AIではそのポテンシャルを発揮しきれない。結果として業務改善も思うように進まない。これが物流現場が抱えるジレンマです。
「聞けば答える」から「自ら動く」へ:エージェント型AIという選択肢
チャット型AIは、ユーザーが質問や指示を入力して初めて動き出します。PCの前に座り、指示を出し、データを渡し、回答を待ち、必要に応じて修正を指示する。この一連のやり取りが前提です。
一方で、今トレンドとなりつつあるのがエージェント型AIです。世間で「AIエージェント」「自律型AI」と呼ばれるものがこれにあたります。テクノロジーのトレンドを分析するGartnerは2030年までにSCMソリューションの50%がエージェント型AI機能を搭載すると予測しており、主要なSCMベンダーも相次いで対応製品をリリースし始めています。
チャット型との最大の違いは、人間の指示を待たずに動き出す点にあります。注文メールの受信、出荷指示の発行、在庫が基準値を下回るアラート——こうした業務上のイベントをAIが自ら検知し、自律的に動作を開始します。これまでチャット型AIに都度指示を打ち込んでいた状況から、AIが起動の自律性を持つとどうなるか。少なくとも、人間がPCの前に張り付く必要はなくなります。
では、起動したエージェント型AIは何をするのか。そこで鍵になるのが、業務データとの接続です。
業務データとつながることで生成AIが真価を発揮する
エージェント型AIが業務システムのイベントを検知して起動する——これだけでも大きな変化ですが、真価を発揮するのは業務データと深くつながったときです。業務上のイベントをきっかけに、AIが自らデータを読み取り、状況を判断し、対応を計画し、実行する。重要な判断が伴う場合には、人間が確認・承認してから実行に移す(いわゆるHuman-in-the-Loop)。これがエージェント型AIの基本的な動作イメージです。
では、これが日常の業務をどう変えるのか。物流現場の朝を思い浮かべてください。現状では、担当者が出社してから前日の注文データを整理し、WMSを操作して出荷指示データを作成し、そこから現場にピッキング指示を出す。この一連の作業を終えて、やっと現場が動き出します。
エージェント型AIが業務データに直接アクセスできる環境では、この景色が変わります。夜間に届いた注文データをAIが自ら検知し、過去の出荷実績や在庫状況を参照しながら出荷指示データを作成する。朝、担当者が出社したときには、すでにデータが揃っている。確認して承認すれば、すぐに現場が動き出せます。
さらに、日々の業務データが蓄積されるにつれて、AIの判断は精度を増していきます。取引先や納品先に応じたピッキング・出荷の優先度を過去の実績から学習し、ベテラン担当者が経験的に行っていたピッキング順の並び替えを再現できるようになります。
その先には、納品書や出荷指示書の備考欄に書かれるような曖昧な指示——「この取引先はパレット積み厳禁」「午前着必須」といった情報をAIが過去データから補完し、指示書に反映した状態で出せるようになる。そんな可能性も見えてきます。もちろん、既存の業務システムとAIをどう接続するかという技術的な課題はあります。しかし、業務データに接続されていないAIにはできない、自社の業務を知り尽くしたAI。それが業務データとの接続がもたらす本当の価値ではないでしょうか。
さいごに
人手不足が深刻化する物流業界において、エージェント型AIは求められているAIの姿ではないでしょうか。ChatGPTやCopilotを試して「うちにはAIは合わない」と感じた方も、諦めるのはまだ早いかもしれません。チャット型だけがAIではなく、物流現場の実態に合った活用の形があります。エージェント型AIが、その選択肢の一つになるかもしれません。
貴社の業務に合ったテクノロジーの活用の可能性を、一緒に探ってみませんか。
BLUEDGE(ブルーエッジ)では、SCM・物流分野と最新テクノロジーに対する豊富な知見をもとに、エージェント型AIを含む最新技術の活用についてご支援しています。「生成AIを物流業務にどう活かせるか分からない」「自社に合ったAI活用の方向性を探りたい」といった場合は、ぜひ私たちの知見をご活用ください。
BLUEDGE(ブルーエッジ)について
BLUEDGE(ブルーエッジ)では、「あるべき姿」をともに描くコンサルティングと「あるべき姿」をカタチにするシステム開発を通じて、お客様の戦略策定から実行までを一貫体制でご支援しています。日本ロジスティクスシステム協会(JILS)会員。
著者プロフィール
守谷祥史(Shoji Moriya)
BLUEDGE合同会社 代表社員CEO。15年以上にわたり製造業、小売・流通業、物流業などを中心に幅広い業界に対する事業/IT戦略の立案と業務改善、システム導入など実行に関するコンサルティングに従事。現在は、主にサプライチェーン・物流分野におけるソフトウェア、クラウド、AI、ロボティクスなどテクノロジー活用に関するコンサルティングとシステム開発を専門としている。Google Cloud認定 Professional Cloud Architect(PCA)。
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